第29章 中忍試験・死の森
サスケをかばったナルトは、奴の舌にとらわれて、目の前に連れて行かれる。
「ちくしょー!離せー!」
ナルトは叫ぶが、それを聞いてもらえるような相手ではない。
何やらの封印術を食らったナルトは、気を失ってしまった。
そしてヤツは用済みとでも言うかのように、ナルトを投げ捨てたのだ。
『…ナルトくん!!』
あの高さから落ちたら、間違いなく死ぬ。
助けに行こうと体を起こした時、サクラがクナイでナルトを木の幹に留めた。
助かったと一息吐く。
そして、サクラのそばの影分身を解き、彼女の元へ舞い戻った。
『ナルトくんをありがとう、春野さん………春野さん?』
声をかけるが返事はない。
どうしたのかと側によると、サクラがプルプルと震えていた。
恐怖で震えているのかと思ったけれど、そうじゃなかった。
サクラはサスケをキッと睨み、大声で叫んだのだ。
「サスケくん!…ナルトは確かに、サスケくんと違ってドジで…。
足手まといかも知んないけど…!
少なくとも臆病者じゃないわ!ねぇ!!そうでしょ!!」
思えば、いつもサスケのやる事なす事全て肯定的だったサクラが、初めてサスケに否定的な気持ちをぶつけた瞬間だったと思う。
『…お願いサスケ!』
お願いだから。
サクラの気持ちを、二人の仲間の気持ち、受け取ってほしい。
そんな思いで、サクラに続いて私も叫んだ。
そしてサスケは大きく息を吐き、眼に写輪眼を宿した。
その姿は覚悟を決めた、恐怖を振り切った強い人の姿。
そんなサスケの姿に、私とサクラの表情も少しだけ明るくなった。
リクは、影分身を出すほどのチャクラすら残っていない。
そんな状態で、サスケの元へ行っても足手纏いなだけ。
(…大丈夫、サスケは強い。本当にヤバイ時だけ加勢する。大丈夫、大丈夫だから。)
サスケの元へと走り出しそうな足をぐっと留める。
自分のチャクラの少なさに怒りを感じながらも、サスケを信じ、 その姿を見守った。