第29章 中忍試験・死の森
「いってー…おい、みんな。大丈夫か?」
そう言いながら現れたナルトから、嫌な気配が混じっている。
リクは、サクラを庇うようにしてクナイを構えた。
「え、どうしたの?」
『…大丈夫。』
しかし、そのクナイを持った手は、カタカタと震えていた。
背に冷や汗が流れる。
怖い。
グッと構えると、サスケが"忍機"と問う。
それにナルトは合言葉を完全に復唱した。
しかし、合言葉を言い終わったナルトに向かい、サスケは険しい表情でクナイを投げつけたのだ。
「サスケくん、なんで!?ナルトは合言葉をちゃんと…。」
『違うよ春野さん。ナルトくんがこんなの覚えられるわけない。…なんたって、ペーパーテスト白紙の男よ?』
サクラが驚愕し、納得したように偽ナルトを睨むと、それは煙に巻かれた。
あの草隠れの、忍。
一番警戒していたやつだ。
「てめーが土ん中で俺たちの会話を聞いていたのは分かっていた。」
サスケの言葉で、リクも頷く。
気配を感知していた。
そしてサスケもまた、言わなくても気付いていたのだ。
第三者の、存在に。
だから、変化で襲ってくる可能性も考えた。
そして気付いている事がばれないように振る舞い、ナルトが覚えられるわけもない長い歌を合言葉にしたのだ。
「なるほど…。つかれも油断もないってわけね…。
思った以上に楽しめそうね。」
もっとも警戒していたそいつは、不気味に笑っていた。