第27章 中忍試験・開幕
人生という道に迷ったらしいカカシがやってきたのは、それから数時間後の話だ。
そして4枚の中忍選抜試験の志願書を、私たちの前に差し出す。
既に推薦はしてあるらしい。
「受けたい者だけその志願書にサインして、明日の午後四時までに学校の301へ来ること。以上!」
言いたいことだけ言って、颯爽と帰っていったカカシは勝手すぎる。
勝手な人だけど、心の芯は強い人。
カカシが先生だから、学べた事はたくさんある。
そんな事を思い、いつも許してしまうから、カカシの遅刻癖は治らないのだろうか。
…いや、言っても同じなような気がするけれど。
それよりも何よりも、中忍試験だ。
本当に出られるとは思ってなかったから、嬉しくてゾクゾクと体が震える。
ナルトは嬉しそうだし、サスケもニヤリと笑っていた。
けれど一人だけ、浮かない顔をしていて…。
(春野さん…どうしたんだろう。)
私たちの少し後ろを、下を向いて歩いている。
中忍試験…出たくないのだろうか。
だけど、なんて声をかけたら良いかなんて分からない。
(……同じチームなのに、そんなことも分からないなんて。
私って、本当にダメダメよね。)
チームワークが大切ならば、まず仲間のことをきっちり知っておかなければならない。
だけど、よく考えてみれば、サクラの事だってほとんど知らない。
今まさに隣で睨み合っているナルトとサスケをどうする事もできない。
大きく溜息をつき、リクは何となく空を見上げた。
『みんな、明日は集合時間より少し前に、別の場所で一旦集まりましょ。』
そうして、サクラの事が気になりながらも、今日は解散となったのだった。