第27章 中忍試験・開幕
冗談で言ったつもりだったはずなのに、リクは辛そうな顔をする。
(いや、お前より可愛い奴はいねぇんだよ。)
サスケは、リクの頬から手を離し、大きく息を吐いた。
アカデミーの頃からそうだ。
男子の中での可愛い女子ランキングや、美人ランキングとやらで、断トツで1位だったんだぞ、お前。
そんな男子達のしょうもない事には付き合いはしなかったが、リクに手を出そうとする奴は全員にらみ倒してきた。
鈍いのだ、リクは。
自分の魅力に全く気づいていない。
だから余計に変な虫がつきまとわれていたのだ、あの頃は。
今だって、どれだけ自分が可愛い奴かだなんて…。
「リク…。お前、もっと自覚しろよ。」
『ブスだって事を?サスケに言われなくたって、そんな事わかってるわよ!余計なお世話!』
さらに機嫌を悪くしてしまい、言葉足らずの自分に喝を入れる。
自分自身が不器用な事は重々承知だが、リクの前では特にそれが発揮されてしまう。
「ちがう、そうじゃない。」
『どういう事よ。』
リクがジッと俺を見る。
何か言わなければと思い、口をモゴモゴしていると、リクはそっぽを向いて早歩きで行ってしまった。
「おいリク!待て!」
『こんな変顔野郎と歩いてたら、サスケに被害が及ぶわ。だから離れてあげてるのよ。』
怒っているのは分かっている。
けれど、頬を膨らませ少し涙目なリクに、知らず知らずに見惚れてしまった。
「そんな顔すんなよ…。俺の心臓潰す気かお前は。」
『心臓潰す…?』
思わず心のうちが言葉になってしまっていた事に気付き、慌ててブンブンと首を横にふった。
「………なんでもねぇよ。行くぞ。」
前にいたリクの隣に並び、手を繋ぐ。
一瞬リクは驚いた顔をしていたが、すぐに笑顔に戻った。
その笑顔が、可愛くて、綺麗で。
なんと表現すればいいのかわからない。
照れくさいけれど、繋いだ手が温かい。