第23章 波の国・修行
たどり着いたのは、森。
ある1つの木の幹に、リクはひたすら拳をぶつけていた。
『やだよ、消えて…!』
先ほど鮮明に描かれたのは、大切だった人の死ぬ姿。
そして、サスケが隣から消え、一人になった自分の姿。
なんで突然、こんな事が頭に浮かんだのか、自分でも分からない。
けど、頭から離れない。
『一人にしないで…。』
そう言って、力なく膝をつく。
身体が、震える。
すると、背後から人の気配がした。
振り返る前に、そっと後ろから抱き締められた。
誰かは、わかる。
『…サスケ。』
「俺は、ここに居る。お前を一人になんかしねぇよ。
…あいつらも、お前を一人にしてやろうなんて、思ってない。」
…何に怯えているのか、分かってくれるのだろうか。
大切なものを失う事が、怖くて怖くて仕方がない。
『…みんなが、居なくなるのが怖い。』
「大丈夫だ。」
サスケの一言で、握っていた拳を下へ落とす。
ひたすら木を殴り続けていたからか、拳から血が滲んでいた。
そんな手をサスケは握ってくれる。
(やっぱり…安心する。)
震えが、治ってきた。
先程まで頭にあった、映像が、薄れてゆく。
サスケといると、落ち着く。安心する。
『…ありがとう。』
そばに居てくれて、ありがとう。
サスケは暫く、そのままでいてくれた。