第1章 始まり
「ソラ、お母さん、そこで買い物してくるから、ここに座って待っててね!歌ったりしちゃダメよ?」
『はぁーい!わかってる!』
笑顔の母、ハルに手を振り
ソラは店の目の前にあるベンチに座った
ハルとソラの間には約束事がある。
"人前では絶対に歌わない"
もしも、セイレーンであることがばれたら、里で過ごしにくくなる、という理由で。
里でソラたち親子がセイレーンと知っているのは父のサクヤと、うちはの長であるフガク、その妻のミコト、そして三代目火影だけであった。
ソラは、自分の歌に力があることは知っていた。
歌は好きだ。だけど、それで居場所がなくなるなら、歌わなくていい。
そう思っていた。
しかし、力があったとしても、何故私はみんなと違って、歌ってはいけないのかをしっかり理解していなかった。
価値を、知らなかった。
(退屈だし…。少しぐらいいいよね。)
そう思って 目の前の少し枯れた花に向かって歌を歌った。
(花が元気になりますように)
すると、枯れていた花は見違えるほど元気を取り戻す。
それを見て満足し、その花を見つめて笑った。
影で仮面をかぶった者が見ていると知らずに。