第15章 負けない
「リクちゃん…。これ傷薬だから、使って?
今日は日向で大切な行事があるから、帰らないといけなくて…。
サスケくん、リクちゃんをお願いします。」
「当然だ」と頷くと、ヒナタは一礼をして走っていった。
『ヒナタ、大切な用があるのに、私の為に…。』
リクが、ヒナタにもらった傷薬を、ぎゅっと握りしめていた。
「お前なら、こんなに傷を負わなくても、どうにかなったろう。」
あんな、弱いやつら、リクが本気を出せばすぐに片付く。
しかし、リクの答えは、サスケの予想を上回るものだった。
『何されても、手を出さない、負けないって決めたからね。
あの子達は、確かに理不尽だったけど、同じクラスメイトだし、いつか仲良くなれるかもしれないじゃない?
傷つけたくなかったの。』
『物理的に、ね。』と、付け加えて笑うリクから眼を離せなかった。
(物理的にって…。こいつは悪魔かなんかか。)
サスケは苦笑いしてからリクの頭を撫で、隣に座り込んだ。