第15章 負けない
「リクちゃん?」
唯一、ただの我儘でないと気付いてくれたのは、やはりヒナタだ。
『ヒナタ…。私、どうしても歌えないの…!』
少し震えた声でいうと、ヒナタがぎゅっと手を握ってくれた。
「先生、リクちゃんは歌えないんです。私が代わりに歌うのはダメですか?」
「それはさすがにダメね…。」
ヒナタが肩を落とす。
しかしリクは、ヒナタが気を遣って「代わりに私が」と言ってくれた事に心が温まる。
そして、先生にも隙ができた。
これは、思ってもみなかったチャンスだ。
『…ヒナタ、ありがとう!』
「ちょっと!歌神さん!まちなさーい!」
そういって、リクは教室から抜け出した。
先生が呼び止めたって、止まらない。
もう、方法がないので仕方がないのだ。
セイレーンだとバレるわけにはいかない。
サスケガールズの嘲笑が聞こえてくるが、無視して廊下を走り、屋上へ向かった。