第11章 新しい日々
ヒルゼンこと、三代目火影は頭を悩ませた。
(名前まで忘れるとは…。イタチ、かなり強めに術をかけたな。)
三代目は"ふぅ"と一つため息をついた。
「お前の名前は、"歌神 リク"だ。」
歌神とは、ソラの母、ハルの旧名である。
歌神一族は、俗にセイレーンと呼ぶため、本当の名はほとんど知られていない。
実際、火影でさえ、ハルから聞くまで知らなかった。
(流石に、うちはソラとは言えぬからな)
心の中でそう呟いた。
『歌神…リク。それが私…。』
「ああ、持ち物にそう書いてあった。森で倒れていたところを、うちの里の者が発見し、連れ帰った。」
『そうですか、助けてもらってありがとうございます。』
「いや、いいんじゃよ。それよりリク。今日から木の葉に住みなさい。行くあてもないじゃろ?家も用意してやるから。」
突然の話に、リクは戸惑った様子だったが、
『断ったところで、記憶のない自分がどうすれば良いか分からない』
と述べ、深く礼をした。