第3章 萌葱-moegi- scene2
二人並んでメイクを落としながら、こっそりと聞いてみる。
「ねえ…この後仕事入ってるの?」
「え?うん。渋谷だよ」
そっかあ…渋谷のNHKホール。
そこで紅白出場歌手さんと面談なんだ。
「そっかあ…頑張ってね」
「うん、ありがとうね」
そのまま鏡を見て無言になってしまった俺を不思議そうに見てる。
「どうしたの…?」
「えっ…あっ…なんでもないよっ?」
寂しい…なんて、言えない。
元々、今の時期は忙しくて当然って時期だし。
俺は今年の前半にドラマと映画が続いたから、ここのところ仕事はレギュラーしかないけど…
何倍もレギュラーを抱えてる雅紀は、本当に息をつく間もないくらいスケジュールが密だった。
それなのに、紅白の司会なんて決まったもんだから、更に忙しくなっちゃって…
ほとんど、俺と会う時間もないほどだった。
「相葉さーん。車着きました」
「あ、はーい。今行きます」
慌てて顔を洗い流した雅紀は、鏡越しにこちらを見た。
「ん…?」
「リーダーは?今日この後、仕事?」
「ううん…お家、帰るだけ」
「そっか」
ニカッと笑うと、洗面所を出ていった。
その後姿を鏡越しに見送りながら、寂しさが募っていくのを止められなかった。