第15章 ガーネット
潤は俺に向かって握った手を差し出してきた。
「なんだよ」
「いいから、はい」
俺の手を無理やりひっぱって、何かを手のひらに落とした。
「なに…?」
「これね、カーバンクルのブレス」
革の紐に、シルバーの台座が付けてあってそこには丸い赤黒い石が埋め込んであった。
「カーバンクル…?」
「ガーネットのことだよ」
「ガーネットって…1月の誕生石じゃないか…」
「そうだよ。誕生日プレゼント」
「え?」
「少し早いけど…お誕生日おめでとう。翔くん」
「…ありがとう…」
ソファに座りなおすと、俺の腕時計を外して左手首にブレスを付けられた。
「…似合うね」
「ああ…ありがとう」
「この石は、翔くんのお守りだよ」
「お守り?」
「だから、なるべく身に着けててね」
あまりもうアクセサリーを付ける習慣はないんだけど…
「わかった…ありがとう」
握りしめられた左手を持ち上げられて、手の甲に潤がキスをした。
「潤…」
「…じゃあ、帰るね」
「え?」
「バカだな…もう、翔くんとはそういうことしないの」
そっと手を離すと、立ち上がった。
「気の入ってないえっちは、ごめんだよ」
おどけて言うと、荷物を持って歩き出した。