第15章 ガーネット
「しない…」
もう、智くんに対して駆け引きのカードは切れない気がした。
最初からわかっていたことなのに。
俺の物にはならないって…
こんなに自分が苦しくなるなんて、思ってもみなかった。
「初めて見る…」
「え?」
「こんな翔くん、初めて見る気がする…」
「そんなことねえだろ…」
「ううん…初めてだよ。こんな顔してるの」
智くんも言ってたな…
俺、どんな顔してんだろ…
潤が俺の腕を握った。
腕を引かれて、潤の隣に座ると抱きしめられた。
「そんな顔…するんだね…」
「どんな顔してるっていうんだよ…」
「かわいい…」
「はあ?」
くすくす笑いながら、ぎゅっと俺を抱きしめる腕に力をいれた。
「誰かを真剣に思ってる翔くんって、こんなにかわいくなるんだね…知らなかった…」
「かわいいって褒め言葉なのかよ…」
「そうだよ。褒め言葉…わかんないの?」
「わかんねーよ…」
「ふふ…」
潤の身体が離れていった。
ソファの背もたれに身体を預けると、眩しそうに俺を見た。
「…やっぱ、やーめた」
「え…?」
「俺、敵わないもん」
「何言ってるんだよ」
「そんな顔してるの見ちゃたら…俺、なんもできない…」