第15章 ガーネット
これを…
この感情を人はなんと呼ぶのだろう。
恋だとか愛だとか、そんな言葉で形容できるものじゃなかった。
そんな綺麗なものじゃない。
嫉妬や憎悪、背徳や混沌…
俺の闇は…何処まで広がっていくんだろう。
こんな自分が居るなんて、知らなかった。
そして…
こんなあなたが居るなんて、知らなかった
「翔ちゃん…」
収録の合間、前室から一旦楽屋に引き上げる途中、智くんが声を掛けてきた。
「なに…?」
「ううん…」
俺の隣で歩き始めた。
「今日…どこか行くの?」
「え…?」
「潤、と…」
俺の方を見ないでそう囁くと、立ち止まった。
「行くけど…」
「…そう…」
聞こえていたんだ。
あの声。
「潤のとこにも…忘れ物、したの?」
「は…?」
「…なんでもない」
突然早足で歩き出したから、思わず腕を掴んだ。
「待ってっ…」
「離して…ごめん…なんでもないんだ…」
「待って…智くん…」
二人で、途方に暮れた。
なんであなたは…
俺の心をかき乱すんだ
懐に入ってくるつもりもないくせに。
俺の物になるつもりもないくせに。
「なんで…そんなこというの…」
「だから…なんでもないってば…」