第15章 ガーネット
ゆっくりと俺たちの向かいのソファに智くんは座った。
潤が握りしめる手にはやっぱり痛いくらいの力が入ってる。
どうか見つからないようにと思う反面、見つけて欲しいと思う自分も居て。
あなたがどんな反応をするのか、知りたい。
そんなことをしたって、どうにもならないのはわかってる。
きっと、いつものように何事もなかったかのように。
あなたは笑うんだ。
そして俺を見ない
…ただそれだけじゃないか…
なのになんで俺は、何かを期待するようにあなたを見てしまうんだろう。
一瞬だけ、目が合った。
すぐにその視線は逸らされた。
ほら…いつも通りじゃないか…
「わかった…」
ほうっと小さく息を吐き出すと、潤は俺を見上げた。
「ありがとう…翔くん…」
その小さな呟きは、彼の耳に届いたのだろうか
いつも通りの収録の時間が過ぎていく。
身体に力が入らなくて、少しだるい。
仮面の笑顔を付けて、仮面の俺を演じて。
一体この先に何が待ってるんだろう。
光り輝くような未来の中に立っているはずなのに、俺の周りは闇で。
たった一人の男のために、何で俺がこんな所に堕ちているのかと自嘲するが、やっぱり光は見えてこない。