第15章 ガーネット
「女…そうなのかもしれない…」
「え?」
また俺を見上げると、その瞳は欲情で濡れているみたいだった。
「俺、だって…翔くんに女にされてるもん…」
「なに…言ってんだよ…」
元々おまえはバイで…
俺が強引に関係を迫ったから、身体を開いたのであって。
「…俺のこと、独占しておきたいってわけ?」
「うん…」
「何言ってんだよ…今までだって他に女が居たって、そんなこと言わなかったじゃないか…」
「そうなんだけど…でも…」
誰にも見えないように、俺の手を握ってきた。
「だって、今…翔くんの中にいる人…男だもん」
「は…?」
「見てればわかるよ」
握られた手に痛いくらいの力が込められた。
「お願い…今晩、会って?」
「潤…」
小さな小さな声で、潤は懇願してくる。
「お願い…」
その時、楽屋のドアが開いた。
「おはよー」
入ってきたのは、智くんだった。
「おはよ…」
振り返ることができなかった。
不意に潤が俺に寄りかかってきた。
こいつ…わかっててやってる…
そうは思うけど、俺には突き放すことはできなかった。
背を向けられた時の絶望を、俺は知っているから。