第15章 ガーネット
マンションに着くと、まっすぐに部屋に向かった。
途中で躊躇したら、ドアの前に立てない気がしたから。
走るようにドアの前に立つと、内側から開いた。
「翔ちゃん…」
少し、声が掠れてて。
「風邪でも引いた?」
「え…?」
「声、掠れてる」
「そう…?大丈夫だよ」
一瞬だけ、俺をちゃんと見てくれたけど、すぐにその視線は外れていった。
ちくりと胸を何かが刺していった。
「あっ…」
我慢できなくなって。
無理やり腕を引いて抱きしめた。
少し抵抗があったけど、ぎゅっと抱きしめると大人しくなった。
パタンと玄関のドアが音を立てて閉まった。
「…忘れ物って…なに…?」
「ん…?」
そんなもの、本当はないんだ。
でも、どうしても会いたくて。
「忘れてきた…」
「そっか…」
智くんの腕が俺の腰に回った。
そっと抱きしめてくれると、心の中が温かいもので満たされるようだった。
「ひとつ…あった」
「え…?」
少しだけ身体を離すと、智くんの顔を覗き込んだ。
今度はまっすぐに俺のこと見つめてくれる。
子供みたいに俺を仰ぐ頬を手で包むと、唇を重ねた。
柔らかく、温かい唇はふんわりと俺を包んだ。