第15章 ガーネット
綺麗な形の唇が震えるのを、ただ眺めてた。
「…お願い…なんか言って…?翔ちゃん…」
そのうち、ぽろりと涙が一粒零れ落ちてきた。
綺麗だなと思った。
背もたれに置いた手を動かして、その涙を拭った。
頬に触れると、何かが智くんの中で崩れ落ちるのがわかった。
「なんでも…言うこと聞くから…」
残念…
俺が望んでるのは、そんなことじゃない
首を横に振ると、目を見開いた。
「じゃあ…何が望みなの?」
何も答えずいると、ぽろぽろと涙が溢れだしてきて。
ああ…綺麗だな…
俺は見たいんだ
こんなキツめのタイミングで、あなたが一体どうなるのか
どうあなたが俺に跪くのか
顎に滴る涙の雫をゆっくりと人差し指で拭う。
その指を智くんの唇に擦り付けた。
「智くんは…なにが望みなの…?」
涙の雫が、智くんの唇を一層輝かせた。
「俺が黙ってること。それだけでいいんだよね?」
「翔ちゃん…」
「俺、ホテルで会った時もさっきの電話でも、言わないって言ったよね?」
「…うん…」
「なのにわざわざ何で俺の家に来たの?そんなに俺のこと信用ならないの?」
ほら…こう言ったら、どんどん自分を追い詰めるでしょ?
もっと、見せて
全て見たいんだ