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カラフルⅣ【気象系BL小説】

第15章 ガーネット


俺が気づいてないってことは…
きっとそう、他の誰も気づいてないってことじゃないか。

あのエレベーターホールで見た上気した顔。
あんな顔も、誰も知らないってことになる。

相手の男以外は――

思わず口端が上がってしまうのを止められない。
そっと手のひらで隠すと、智くんを眺めた。

子供みたいにカップをいじりながら、話を切り出せず俯いてる。

これが、俺の知ってる智くんだ。

じゃあ、あの上気した頬を持っている智くんは?

知りたい。
その先に、どんな表情のあなたが居るか…

知り尽くしてみたい

「ジャケット、脱いだら?寒い?」
「…え…?」
「それとも、すぐ帰るから着てるの?」
「う、ううん…」

マグカップをテーブルに置くと、黒のダウンジャケットを脱いだ。

ネルシャツの腕を少し擦ると、恐る恐る俺を見上げた。

「翔くん…あの…」
「ハンガーに掛けておいてあげるよ」

強引にダウンジャケットを奪って、玄関のクローゼットに向かう。

ハンガーにかけてフックに引っ掛けると、智くんの匂いがした。
タバコの匂いに混じって、柔軟剤でも洗剤でも香水でもない。
智くん独特の、甘い香り…

すうっと吸い込んでみた。

…これで容易にはここから抜け出せないよ。

リビングに戻ると、智くんは意を決したような顔をして俺を見ていた。

「翔くん」


泡立つ血が騒いでる

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