第15章 ガーネット
「…やっちまったな…」
一番、突いて欲しくないところを突いてしまったんだ。
自分だって…
今朝まで一緒に居たのが潤だと、知られたらどうする?
やっぱり…口封じに掛かるんだろうな…
コーヒーが入って、マグカップに注ぐ。
リビングに戻ると、智くんはさっきと変わらない姿勢でソファに座っていた。
「おまたせ」
ブルマンのいい豆の香りが漂った。
「…ありがとう…」
両手でカップを持つと、温めるように手で包んだ。
猫舌でもないのに、ふうふうと冷ますふりをして、ちらと俺を見上げた。
「飲みながら聞くよ…」
「うん…」
それでもやっぱり智くんからは切り出せないみたいで。
コーヒーをちびちびと啜りながら、沈黙の時間が流れた。
マネージャーを使って強引に乗り込んできたくせに。
最後の最後で、やっぱりなにかの間違いだったんじゃないかって思ってるんだ。
手に取るように智くんの考えてることがわかった。
ここまで素直で隠し事ができないくせに…
なんで今まで20年以上…俺は智くんの性癖に気づかなかったのか。
潤のことはすぐにわかったのに。
なぜだか血が沸き立ってきた。
誰も知らないの…?
智くんの、あの、顔。