第15章 ガーネット
智くんにしては珍しく、切って捨てるような言い方。
そのまま玄関に入り込んできてしまった。
マネージャーは俺の顔を見て、戸惑っていた。
「…いい。大丈夫だから…帰っていいよ」
「櫻井さん…じゃあ…なんか、すいません」
「いいって。じゃ、お疲れ」
電話の電源切ってた俺が悪いんだ…
しょうがない。
玄関の鍵を締めると、改めて智くんと向き直った。
「…どうしたの…」
「入っても良い?」
「いいよ…」
リビングに案内して、暖房を少し強めにした。
智くんの顔が、ちょっと青かったから。
用件はわかっていたけど、敢えてこちらからは切り出さなかった。
こんな智くんを見るのも初めてだし、なんだかさっきぽろっと言ったことでこんなことになるなんて思ってもみなかったから…
智くんをリビングのソファに座らせて、俺はキッチンでコーヒーメーカーに、粉をセットして。
抽出する間、どうしようかと考えた。
ここに乗り込んでくるってことは、いよいよさっきホテルのロビーでみた男は、智くんの恋人なんだと思えた。
そしてそれは、智くんにとって最も俺に知られたくないことで。
周囲にも漏らしてほしくない、ということになる。