第15章 ガーネット
フロントで精算を済ませてホテルを出る。
本当は上階のレストランで昼食でも取ろうと思っていたけど、なんだか一刻も早くここから出たかった。
昨日はタクシーで来たから、ホテルの前でタクシーに乗り込む。
あの智くんが。
こんなとこで恋人と会ってるなんて…
想像もできなかった。
どんな顔して、女を連れ込んでいるんだ。
タクシーが動き出して、ホテルのロビーを見た。
ガラス張りの玄関から中が見えて、思わず智くんの姿を探してしまった。
「え…?」
智くんは居た。
でもその隣りにいたのは、女じゃなかった。
黒いロングコートを着た、みたこともない背の高い男だった。
「嘘だろ…」
まさか…あいつとここに泊まったのか…?
すぐにロビーは見えなくなって。
俺は視線を前方に戻した。
驚いて、息がちょっとできない。
そんな話…聞いたことないけど…
智くんにそんな趣味があったなんて。
いや、待てよ。
ただの友人かもしれないじゃないか。
ここで自分があんなことしてたからって、智くんもそんなことしてたって思うのはどうか。
でも…部屋の前で偶然会ったときのあの焦り方…
絶対に恋人と来てるって思った。
「まさか、ね…」
ちょっと自分でも、自分の考えていることが信じられなかった。