第15章 ガーネット
一瞬、なんでこんなとこに自分が居るのかもわからなくなるくらい驚いた。
そのくらい、このホテルと智くんが結びつかない。
この人がこんな高級なホテルに、好き好んで一人で泊まるはずがない。
だとすれば…相手がいるはずで。
俺と同じで、誰かと逢瀬を楽しんでいたはずだ。
一瞬でそこまで考えて、すぐに目を逸らそうとした。
でもすぐに智くんの後ろのドアが開きそうになって、思わず見つめてしまった。
「ま、待って」
智くんが焦ってドアの向こうに声を掛けた。
結局、ドアは開かなかった。
「じゃ…」
隠しておきたいものをほじくり返すつもりはない。
すぐに俺は歩き出した。
「待って!翔ちゃん」
こんなとこで何を話すことがあるのか。
止まらないで歩いていると、智くんがエレベーターホールで追いついてきた。
「翔ちゃん、あの…」
「いや、別に…俺、何も聞く気はないから」
顔を見ないで答えると、智くんは黙り込んでしまった。
「そう…ごめんね…」
ちらりと智くんを見ると、上気した顔をしていた。
寸前まで、することしてたんだろうか。
そんなこと考えてしまって、余計に顔が見られなくなった。