第13章 ピスタチオ scene3
「怖くて…」
智の閉じた目から涙がこぼれ落ちた。
「ごめん…来るなとか言って」
ぎゅっと握った手に力が入った。
「和也のオーラが今日ずっとグレーで…俺のこと、ちゃんと見ないし…もし和也からおまえなんか要らないって言われたらって思ったら、怖かった」
人には見えないものが見える分…智は心のガードを厚くしてないと、だめだったんだ。
だから鈍感にならざるを得なかったり、投げ出したりしないと自分を守れなかったんだ。
今の今まで気づかなかった。
俺、そんな根本的なことわかってなかったんだ。
「ごめんなさい…智…」
「謝るなよっ…悪いのは勝手に誤解してた俺だよ!」
「だからこそっ…だからこそ、俺は智に対してもっと向き合わなきゃいけなかったんだっ」
「和也…」
「ごめん。智が視えるのが普通になってた。もっと俺、考えなきゃいけなかったのに…」
「ちがう…和也…」
「違わない」
きゅっと親指で流れ落ちた涙を拭った。
「ごめん…ずっと一緒にいるし…つきあってもう一年になるから、智のこと全部わかったつもりになってた…」
ふっと智は笑った。
「…おまえほど、俺のこと分かってるやつなんて…他に居ないよ…」