第13章 ピスタチオ scene3
「お客さん、着きましたよ」
運ちゃんに起こされて、自宅マンションに着いたことを知った。
慌ててお金を払って降りると、コンビニに寄る気にもならなくて、まっすぐにマンションのエントランスに入った。
オートロックを開けるために操作盤に近づくと、段々涙が我慢できなくなってきた。
じわっと滲む視界を、ごしごし腕で擦りながら鍵を開けた。
自分の部屋に着くまで、誰にも会わなくてよかった。
部屋にはいる頃には、俺の顔はめちゃくちゃになってて。
涙と鼻水でぐしゃぐしゃだった。
「ぶえぇぇ…」
もうみっともないくらい泣いた。
ぶたっ鼻になってしゃっくりあげても泣いた。
自分が何をしたのかはわからない。
でもあんなに俺を拒絶するような背中、初めてだった。
だから…怖くなって…
本当はちゃんと話した方がいいのはわかってたけど。
俺は逃げた。
ソファのクッションを積み上げてる中に顔を突っ込んで、思い切り声を上げて泣いた。
今日…誕生日だったのに…
もうとっくに日付は27日になってて。
智の誕生日は最悪の形で終わった。
最悪にしたのは、俺…
わかってるよ…多分なんか俺が悪いことしたんだ…
でも、何も言ってくれない智にも、俺はがっかりしたんだ。