第12章 ピスタチオ scene2
「集まりやすいってことは…あれは”誰か”のものじゃなかったってことですか?」
「さすが櫻井さん、よくわかっていらっしゃる」
コトリと湯呑みをテーブルに置くと、先生は少し考え込んだ。
「そうですね…あれは、ここに溜まった思念が、何かのきっかけで塊になってしまったんでしょう。だから”誰か”特定の人のものではないです」
「そっか…俺たちが恨みでも買ってるのかと思ったけど…」
「そうではないです。今回はたまたま、ですよ」
「なら、よかった…」
塊になった思念は、彷徨っている魂を飲み込んで、どんどん力を付けて、遂にこういう事態に陥った。
たまたまそれが今日だったというだけで、本当に偶然だったみたいだ。
「でも…皆さん、やっぱりお持ちになっているものが強いから、こういう事態を引き寄せてしまうんですのよ」
奥さんが言うと、先生はまた苦笑いをした。
「え?どういうことですか?」
潤が聞くと、少しだけ先生は真顔になった。
「やはり、芸能界で成功される方は、強い運気や星をお持ちなんです。皆さんも例外ではありません。そういう強いものに、ああいう実体のないものは惹かれやすいということです」