第12章 ピスタチオ scene2
先生はそっと相葉ちゃんの額に触れたまま、なにかブツブツ言っていたが、手を外した。
「これで大丈夫」
翔くんの方を見ると、にっこり笑った。
「ソファに寝かせましょう」
先生と翔くんが抱えて相葉ちゃんをソファに寝かせると、先生は額の汗を拭った。
「先生、ひとまず休んでください…」
ソファは埋まってたから、ミーティングテーブルの方に座ってもらった。
「本当にありがとうございました…」
翔くんが頭を下げると、ふたりともにこにこと笑ってくれた。
潤がいそいそと熱いお茶を淹れて出してくれた。
「結局、アレってなんだったんですか…?」
ちょっと遠慮がちに潤が尋ねると、先生はお茶を少し啜った。
「まあ…思念ですなあ…」
「思念?」
「生きた人間の思いと言うんでしょうか…」
「霊魂ではないってことですか?」
翔くんが聞くと、先生は頷いた。
「端的に言えば、嫉妬とかそういう物ですな。それが塊になったと言えばいいんでしょうか…」
「ひぇ…なんだそれ…怖い…」
潤がお盆を持ちながらぶるっと震える。
ふっと先生は笑ってまたお茶を啜った。
「そういう怖いという気持ちも、あの思念の中にはありました。おそらくここがテレビ局だからでしょうかね…そういう思念が集まりやすかったということでしょう」