第12章 ピスタチオ scene2
先生が人差し指と中指で空中に格子を描く。
また何かぶつぶつと言うと、指先で描いた格子が光る糸のようになって見えた。
「あっ…」
その格子模様はぶあっと広がって網みたいになった。
先生がその手を振り上げて、黒いものに向かってぶん投げるようにしたら、その網は黒いものを押し包んだ。
ごおおっと音を立てながら、黒いものは暴れている。
でもその網からは抜け出せないみたいだ。
「二宮さんの身体が中にはいってしまいましたな…」
行長先生は呟くと、動けなくなっている黒いものに手をかざした。
「ど、どうなってんだよぉ…」
潤が泣きそうな声を上げた。
翔くんもわけがわからないって顔をしてる。
あー…
相葉ちゃん、もう気絶しそうになってる…
真っ青になって、でも目が離せないみたいだった。
「大丈夫ですよ…今、引き剥がしますから…」
奥さんが守るように俺たちの前に立った。
床に伏せたままの俺たちは、そのまま行長先生の動きを見守った。
その時、黒いものがもぞもぞと動いた。
「あっ…」
行長先生が慌ててその黒いものの中に両手を突っ込んだ。
こじ開けるように両手を広げると、そこから犬が顔を出した。
「黒っ!?」