第12章 ピスタチオ scene2
「黒っ…今、おまえ弱ってんだから…」
黒の姿は、前よりもぼんやりとして視える。
先生によると、それが体力(というか、おばけだから霊力?)を使って弱っている証拠なんだそうだ。
たぶん、あの黒いものを追っ払ってくれた時にだいぶ消耗したんだ。
だからここで無理をしたら、黒が消えてしまう可能性だってあるのに。
「あおおおおんっ…」
「ちょっ…ヤメロ!黒っ…」
翔くんと俺の手をすり抜けて、黒はドアに飛びついた。
「あっ…」
行長先生が止める間もなく、ドアは開いた。
はらりと御札が落ちてきた。
「せいっ…!」
先生が何か叫んだ。
その瞬間、楽屋のドアが大きく開いて真っ黒なものが飛び出してきた。
先生の身体が吹っ飛んできた。
「わあっ…」
身体を受け止めると、先生はすぐに飛び起きた。
「皆さん伏せてっ…!」
黒いものは凄い大きくなっていた。
ずるずると音を立てながら、楽屋から遠ざかろうとしている。
「に…ニノが居ないっ…」
相葉ちゃんが悲鳴みたいな声を出した。
楽屋にも廊下にも和也の姿がなかった。
「縛っ…!」
なにやらぶつぶつ言っていた先生が叫ぶと、黒いものの動きは止まった。