第12章 ピスタチオ scene2
楽屋のドアには御札が貼り付けてあった。
俺たちがこっちに向かっている間に、奥さんがここに黒いものを誘い出して閉じ込めたんだそうだ。
中にも御札が貼ってあって、ここから出られないようにしてあるんだって。
チーフはもう真っ青を通り越して真っ白な顔をしている。
なんか見えたらしい。
視える人と行動を共にしていると、たまに見えない人も視えることがあるらしい。
「あの方が黒いものの場所を教えてくださったんですよ」
奥さんが天井おじさんを見上げた。
おじさんは相変わらず無表情でぶら下がっているが、なんかちょっとだけドヤってしてる。
きれいな女優さんばっかりみてるわけじゃないんだ…
座敷わらしとAD風の女の子は居なかった。
もしかして黒いものに吸収されちゃったかな…
「ありがとう。よくやってくれたね…」
行長先生は奥さんを労ると、ドアの前に立った。
「皆さん、護符を外しますので後ろに下がっていてください」
そう言って俺たちを下がらせようとしたけど、和也は先生の方に行こうとする。
「わんっ…」
「ちょ、だめだってば…黒!」
「わんっ…わんっ…」
翔くんと俺で抑えようとするんだけど、言うことを聞かない。