第12章 ピスタチオ scene2
「先生…どうでしたか?」
翔くんが先生にタオルを渡しながら聞いた。
行長先生の顔をみると疲れ切っていた。
「…すいません。遠隔で視るのはとても神経を使いまして…まだ、見つかりません…」
「そうですか…」
行長先生はタオルで額を拭いながら向かいのソファに腰掛けた。
「あっ…俺、お茶でも淹れるから!」
「いえいえ…相葉さん、そんなことなさらないでください」
「いーの!先生は休んでて?お台所、使わせていただきます!」
「あ、俺も行くよ」
潤も一緒になって相葉ちゃんと応接間を出ていった。
「くぅん…?」
黒は俺の顔をぺろりと舐めるとにっこりと笑った。
「ごめん…そんなひどい顔してるか…?」
ぶんぶんと顔を縦に振ると、黒は俺の胸に額を擦りつけてまた、見上げた。
”元気出して?”
と声が聞こえてきた。
犬にまで励まされてしまった…
ちょっと情けなく思っていると、くっくと行長先生は笑いだした。
「黒が、一番この状況をわかっています」
「え?」
「なにせ、あの”黒いもの”と大野さんが仰っていたものを追っ払ったのは黒なんですから…」
「あ。そか…」
じっと和也の顔を見ていたら、黒は大人しく俺を見つめ返した。
”大丈夫”
そんな声が聞こえた。