第12章 ピスタチオ scene2
中に入ると、和也はソファに眠っていた。
俺たちが近づくと目を開けた。
「和也…」
思わず呼びかけた。
「くぅん…」
やっぱり、中身は黒だった。
黒目がちな目を俺に向けて、申し訳なさそうにしている。
「黒、気にするなよ…和也の留守を預かってくれてありがとうな…」
頭を撫でてやると凄く嬉しそうにした。
ぺろりと俺の手を舐めると、満足げに微笑んだ。
…やっぱり、中身が違うと表情も違うんだな…
こんなにかわいい和也を見たことがなかった。
いつも和也に取り憑いた時の黒はハイテンションではしゃぎまわってたし…
昔、ライブで使った幼いころの写真…
ハチマキをして微笑む和也を思い出した。
カメラに向けて満面の笑みを浮かべている和也は、とても素直で可愛らしい子供に見えた。
…いや、実際どうだったのかは知らないけど…
今の和也は…いや、中身は黒だけど。
そんな笑顔を浮かべて俺を見つめている。
「おいで黒…」
そっと腕を差し出すと、素直に俺の胸に飛び込んできた。
素直すぎてなんだかぐっとくる。
いつもなんだかんだ理由を付けて、最終的には抱きついてくるくせに…
いつも妙なタメを作るんだよなあ。
ホントあまのじゃくなんだから…