第12章 ピスタチオ scene2
奥さんはじっと和也を見てるけど、やがてため息を吐いた。
「…仰る通り…見えないですね…」
どこに行ったんだ…
「え…奥さん、あの…今、ニノの身体には黒しか居ないってことですか?」
「ええ…黒も二宮さんの身体から離れたいようなんですが、主が不在なので離れられないようです」
「そんなことって…!」
そこまで言って翔くんは絶句した。
「ええ…ありえないことなんです…ちょっと行長に連絡してきます」
奥さんは立ち上がると、急いで応接室を出ていった。
そう、ありえないんだ――
普通、生きてる肉体から魂が離れるなんてこと…ないんだ
生霊とか、強い意志を持って自分で肉体を出ることは稀にある。
前に翔くんに取り憑いたのは、そんな生霊だった。
あの時のことを後から聞いたんだ。
行長先生は、翔くんにこう言ったそうだ。
そうじゃなければ、肉体から魂が出るのは死ぬ時だと…
ぞっとした
急に怖くなった
「リーダー…」
相葉ちゃんが俺の隣りに座って肩をしっかりと抱いてくれた。
「大丈夫だよ…ニノ、絶対帰ってくるから…」
返事をしたかったけど、上手くできなかった。
腕の中にいる和也はあったかい…
あったかいのに、和也はここにはいない
「和也…」
呼びかけてぎゅっと抱きしめてみたけど、和也は目を覚まさなかった。