第12章 ピスタチオ scene2
「へえ…なんでだろうね、急に…」
「さあ…俺にもわかんなくて…今度行長先生のお宅には行く予定なんだ。もしかして”蓋”が開いてるかもって思って…」
「ああ…」
前に潤に猫が取り憑いた時…
あの時、翔くんの霊感の”蓋”が開いて。
それで見えた過去の記憶が解決の糸口になった。
人間は全ての人が本当は俺みたいに、現し世の者じゃないものも見える。
まあ、俺にだって見えないものもあるけど…
本来なら、全部の人が全部見えるんだって。
だけど、それじゃ普通の人間は生きていくのに苦労する。
だから普段はその蓋が閉じているんだって。
って行長先生に聞いた。
俺にはよくわかんない。
じゃなんで俺はその”蓋”が開いてるのか…
それはまだ行長先生には聞いてみたことがないから、わかんなかった。
「あ…」
すうっと天井おじさんが楽屋の前を通り過ぎた。
それと同時に、さっきすれ違ったAD風の女の子もぱたぱたと走ってきた。
まるで…集まってくるように…
「なに?どうしたの智くん」
「…翔くん、楽屋入ってて」
「え?」
多分、悪いものじゃないとは思う。
だから、こんなに警戒することないんだろうけど…
俺自身は、こういうのは日常だから、なんとなく身を守ることはできる。
だけど、やっぱ皆はなあ…無理だよね。
だって見えないんだもん。