第12章 ピスタチオ scene2
エレベーターを出ると、まっすぐに楽屋に向かう。
後ろをついてくるマネージャーはどっかに電話しながらついてきてる。
ふと見上げると、天井からおっさんが生えてる。
「…またかよ…」
にょきっと無表情に生えているおっさんは、先々週くらいからここにずっといる。
「暇なんだなぁ…」
きっと生前は、テレビが好きだったんだろう。
有名な女優さんなんかが通ると、無表情が一瞬揺らめく。
「おはようございます」
女の子のADさんっぽい人が挨拶していく。
パタパタと音を立てながら、俺の横を駆けていった。
「…ざーす」
「え?なんすか?」
後ろにいるマネージャーが素っ頓狂な声を上げた。
「…あー…なんでもね」
あの子、やたらはっきり見えたけど、あっちの世界の人か。
俺の日常は、こんな風に異世界の人だらけだ。
まあ、こんなこと誰にも言わないけどね。
がしょんと楽屋のドアを開けて中に入ると、潤と翔くんが居た。
「おはよー」
「はよー大野さん」
「智くんおはよー」
潤は今日はなんだか元気ないな。
ちょっとくすんだオーラの色。
翔くんは…緑色。
眠いんだな…
「ちょっと寝たら?」
「へ?なに?」
「眠いんでしょ?」
「ああ…よくわかったね…顔、酷い?」
メイクはもう終わってるから、ペタペタとほっぺたを撫でた。