第11章 珈琲色
身体が…熱い…
「どうしよう…もしかして…?」
着替えながら鏡を見たら、俺の身体が赤くなってて。
慌ててカーテンを閉めた。
「櫻井?どうした?」
「あ…いや…なんでもない…」
「具合、悪いのか?俺たち、ちょっと打ち合わせあるから、待てるか?」
「あ、ああ…平気だから、行ってきてよ」
確か…マネージャーたちはβで。
時には雅紀みたいに、Ωのフェロモンに気づく人もいるけど、幸い気づいていないようだった。
マネージャーたちが出ていくのを確認して、慌てて抑制剤をカバンから取り出した。
「なんで…もう来たんだろ…」
前回からまだ三ヶ月経っていなかった。
「う…あぁ…」
抑制剤を飲んだのに、身体が熱くて…
まずい…ニノが来るまでにどうにかしないと…
この匂いは…
αを狂わせる
ニノが運命の番と勘違いしてしまったら…
こんな悲劇はない。
きっとニノには、ふさわしいαがいる…
俺みたいなΩよりも…もっとふさわしい人が…
「早く…収まれ…」
ぎゅっと自分の体を抱きしめて、床に倒れ込んだ。
熱い…身体が熱い…
「翔ちゃん…」
目を開けると、頬を紅潮させたニノが立っていた。
「嘘だろ…」
間に合わなかったっ…
やばいと思う間もなく、ニノはカーテンの内側に入ってきた。
「翔ちゃんっ…」
床に転がっていた俺の上に、ニノが覆いかぶさってきた。
「やめろっ…」
「翔ちゃん…だって…この匂い…これって…」
「違うっ…」
両腕を取られて床に押し付けられた。
「違わないだろ…?だって…もう俺、ギンギンだもん…」
見たこともない顔で、俺のこと見てる…
男、なんだ…
「Ωだったなんて…」
ニノが男の顔してる
「やめろ…離れて…お願いだから…」
「…俺、嬉しい…」
「…え…?」
「翔ちゃん…俺と番になろう…」
声が掠れてるけど、俺を掴む手には痛いほどの力が入ってる。
「好きだよ…ずっとずっと好きだ…」
「ニノ…」
ゆっくりとニノの顔が近づいてくる。
掴まれた両腕には、もう力が入らなかった。
やっと手に入れた
翔ちゃん…もう絶対に離さないから…
今日からあなたは俺のもの
一生離れることのない…運命のひと
END