第11章 珈琲色
パタンと楽屋のドアが閉じられた。
それはまるで翔ちゃんの心のようで…
「ちぇ…またフラれた…」
こういう話をすると、すぐに翔ちゃんは逃げる。
若い頃から、凄く考えがはっきりしてるから、今更議論する気にならないってことなんだろうけどさ…
「あーあ…翔ちゃんΩにならないかなあ…」
俺の見たとこ、あの人は俺と同じαなんだろうと思う。
だっていつも完璧で…
さらりと自分の役割をこなす姿なんて…αそのもの。
「俺とは偉い違うなあ…」
俺は、αの中でも落ちこぼれなんだと思う。
「あ。」
でも大野さんはもっと落ちこぼれだったのに…
なのに、潤と番になった。
「あーあ…」
翔さん…Ωにならないかな…
そしたら、無理矢理にでも番にするのに…
そう、俺は…翔ちゃんが好き。
ずーっとずーっと…ジュニアの時出会ってから、ずっと好き。
だけど、翔ちゃんには見えないバリアみたいなのがあって…
容易に手を出せる雰囲気じゃなかった。
それに、あの通り、αもΩも関係ないって言い切る人だし…
なのに不思議なんだよね…
時折、俺はあの人を押し倒したくなる。
押し倒して、自分の子供を孕ませたくなる
あの人の中に射精してるのを想像して、何度抜いたか…
でも現実は手を出せないから、適当なβの女の子を引っ掛けて発散してたけどさ…
やっぱり、大野さんと潤を見てると…
俺にだって、運命の番が現れたら…
翔ちゃんのこと、諦める事ができるのかなあ…
「ま、無理だろうけどね…」
今は薬があるから、発情してるΩなんて出会えないし。
それに、俺は翔ちゃんのこと…多分、ずっと好きなんだろうなって思う。
今までも…これからも…
その日は翔ちゃんと二人だけの仕事で。
サクサクと現場は進んで、終了した。
最後に俺だけのショットがあるとかで、翔ちゃんは先に控室に帰っていった。
撮影を終えると、マネージャーたちは打ち合わせがあるとかで楽屋から出てきたところだった。
着替えて待ってろとか言われて、控室に入ると誰も居なかった。
「あれ…?翔ちゃん?」
珍しく着替え用のカーテンが閉まってて。
その奥から呻き声が聞こえたから、思わず開けた。
そこには、上半身裸で倒れ込んでる翔ちゃんと
この匂い…