第11章 珈琲色
なんだか寂しくなって潤くんの身体に触れようとしたとき、リビングからスマホの鳴る音が聞こえた。
「誰だろ…こんな時間に…」
潤くんはベッドから抜け出ると、リビングに向かった。
俺も喉が乾いたからキッチンへ入って水を飲んだ。
水を飲み終わってキッチンを出ると、リビングにはまだ潤くんが居た。
「…誰からだった?」
「ああ…架純ちゃん」
「…そっか…」
メッセージが来てたみたくて、スマホを持って立ってる。
真っ暗なリビングには、ブルーライトに照らされてぼうっと潤くんの姿が浮かび上がってる。
その姿を見てたら、なんとも言えないどす黒いものが胸に広がった。
潤くんの横には、まっすぐに風の出ない扇風機…
「…いいね…おまえは…」
「え?なに?和也」
「なんでもない」
とっとと寝室に入って布団を被った。
あの扇風機は…愚直にそれでもずっと仕事し続けてる。
何の文句も言わず、ただ…
「俺もああなりたい…」
…こんな乱れる心、いらない
「…和也…?どうしたんだよ…」
少し経って、潤くんがベッドに入ってきた。
寝たふりをしてたけど、潤くんにはわかってるみたい。
「何、拗ねてんだよ…」
拗ねてるんじゃない…拗ねてなんか…
「おいって…」
ぐいっと潤くんが背中を向ける俺の肩を掴んだ瞬間、またスマホが鳴り出した。
潤くんの手が離れていく