第11章 珈琲色
静か過ぎる夜――
いつものように、広いベッドで寝ころがっていると潤くんが遅い時間に帰ってくる。
今は、コンサートのリハーサルや打ち合わせで、変更点なんかを詰めてるから、帰りが遅いことが多い。
おまけに映画のプロモーションでいろんなとこ飛び回ってるし…
年末に向けての仕事も前倒しで、俺達に休まる暇なんかない。
その中でも特別潤くんは忙しい。
「…おかえり…」
「あ、起こした…?ごめん」
シャワーを浴びてベッドに入ってきた潤くんに目を向けると、申し訳なさそうに微笑んだ。
「ううん…起きてたから…」
そっと手を伸ばすと、パジャマ越しの潤くんの身体はまだ熱い。
髪からも水の雫が滴り落ちてる。
「…ちゃんと拭かないきゃだめじゃん…」
「ああ…」
身体を起こすと潤くんの首に掛かってるバスタオルを取って髪を拭いた。
「…今日も架純ちゃんと仕事だったの…?」
「ん。番宣だよ…」
「そっか…」
遠い…な…
俺は男で…潤くんも男で…
こんなに長い間ずっと付き合ってきたけど、世間に公表することもできず…
こんな職業だから、潤くんが他の女とキスしたり抱き合ったりすることを見てないといけない。
そう…
見てることしか…できない