• テキストサイズ

カラフルⅣ【気象系BL小説】

第11章 珈琲色







皆、俺のことおかしいっていう。
終いには病院に行こうって…

ばかだなぁ…

別におかしくなんてなってないのに。

なんでわかんないかなあ…
俺は普通に仕事してるだけだよ?

だって、映画の役づくりしてるんだから…


「お名前は?」
「…大野智です」
「職業は?」
「芸能…人?」
「今現在のお仕事について聞かせて貰えますか?」
「はい…」
「お芝居のお仕事は今、ありますか?」
「はい」
「どのような役でしょう?」
「ああ…殺人者です」
「殺人者…ほう…」

少し薄暗い部屋。
白衣を着た人は、メガネを少しずり上げた。

「どうしてその人は殺人を犯したんですか?」
「…傷つけられたから…」
「心を?身体を?」
「心…かな…」
「言葉で?態度で?」
「言葉…」
「どのような言葉でしたか?」

手のひらを見つめて、相手のセリフを思い出す。

「”あなたは誰も愛してなんかいない”…」
「…ほう…」

その人は話しながら何かをパソコンに打ち込んでる。

「大野さん自身は、どう思われますか?」
「え?」
「その言葉で傷ついてしまったあなたの役を、どう思いますか?」
「…可哀想だな、と思います…」
「可哀想…ですか…」

だって…彼は誰からも愛されない
愛してもらえない

だから愛さないだけなのに…

「…だから、俺が…」
「え?」
「いえ…なんでもありません」


外に出たら、マネージャーが心配そうな顔をして俺を見てる。

ばかだなあ…どこもおかしくなんかないのに…

病院の会計を待っている間、ロビーから外を見つめていた。
眩しい陽光が、目の奥にじんわりと突き刺さる。

「…待ってて…もうすぐだから…」

そう…もうすぐ…

「…もうすぐあなたを…愛してあげる…」


もうすぐ、クランクイン。

あなたを愛せるのは…俺しか居ない…


「俺しか…いないんだ…」


目を細めると、世界は狭まった



【END】
/ 1000ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp