第11章 珈琲色
-翔side-
「俺を誰だと思ってんだ…」
ぼそりと呟くと、突然潤がふんぞり返った
「翔の夫!ハズバンド!わかるか!?翔!」
「えっ…ええっ…」
ふっと微笑むと、俺に向かってウインクした上にキザな投げキスをした
「もう…ごめんとか言うなよ?翔…」
そう言うと、微笑んでキッチンに入っていった
「潤…」
なぜだか…その背中を見ていたら涙が溢れた
もう潤とこんな生活送れるとは思ってなかった
なのにあんなことがあっても潤は変わらず…
変わらないでずっと俺のこと愛してくれてる
応えたいと思う
そして、また潤の赤ちゃんを…
太陽と4人で…しあわせに…
そう思うのに、なにひとつ自分でコントロールできない
身体が震えることも、痛みを思い出して汗が噴き出ることも
潤とあいつが重なることも…
何一つ、止めることができない
情けないけど、でも焦っちゃいけない…
そうわかっていても、もどかしくて
もどかしくて…おかしくなりそうだった
それなのに潤は…俺の夫だって…
ちゃんと言ってくれた…
「ありがと…俺の旦那さん…」
待ってて…潤…
いつか…いつかちゃんと…
潤の胸に思い切り飛びこむから
その時は後ろにひっくり返っても知らないから…
いっぱいキスして、いっぱい…
いっぱいいっぱい…潤を抱きしめるから
未来に向かって――
キッチンから、寝起きで掠れた潤の鼻歌が聴こえた
「…へたくそ…」
少し笑った
【END】