第10章 Coke scene3
「ほんとに…?ほんと…?」
握った手を引き寄せて、カズヤを抱きしめた。
「子供は卒業できても、息子は卒業させてやんない」
「にーのぉ…」
翔さんに聞いたけど…
出会った頃のカズヤは、とても大人びていたそうだ。
年に似合わない落ち着き、そして言動…
この子は…実の親に早く大人にされてたんだ…
現実が見えれば見えるほど、大人になっていく。
そんな現実を、早いうちから突きつけて…
聡明だから、受け入れるしかなかったんだ、この子は…
だからたくさん甘やかしてやる。
今は…まだ…
静かに泣くカズヤの背中を、ずっと擦った。
やがて泣き疲れて顔を上げたカズヤは、また一つ大人になったみたいな顔してた。
「…俺、決めた…」
「ん?」
「遺産、放棄しない…遺留分だけでも貰う…」
「そっか…」
「今ここに俺がいるのは、あの人達が俺を作ったんだもん。今までお金だけで俺への責任果たしてきたんだから、死ぬときもお金で責任果たしてもらう」
言ったな…
やっと、親に対して怒ることができるようになった。
「でも、胸糞悪いから、戸籍は分けてやりますよーだ…」
「ぶぶ…じゃあ、近藤先生とその方向で話しようね」
「うん…にーの?」
「ん?」