第10章 Coke scene3
「そうかな…」
「そうだよ。それに、子供でいられる時間は、案外短いんだよ?」
「えっ?」
「おまえはすぐにでも大人になりたいって思うかもしれないけど…学生のうちは、子供でいいんだって」
握った手を、強く握り返した。
「親元を離れたら、責任が発生する。そうしたら自然に大人になっていく。もちろん、それはカズヤが大人になりたいって気持ちがあってこそだけどさ」
「うん…」
「そう思ったら、子供でいられる時間なんて、あとちょっとだろ?」
「ハーバード、行くまで…?」
「そうだよ。それまで、意地でも一人前に扱ってやんないんだから」
「にーの…」
ホントはもっと甘やかしたいよ…
実の親から与えられなかった分、もっともっと甘やかしたいよ…
でも、カズヤが大人になる時間は、すぐそこに来てる…
時の流れは戻らないし、待ってもくれない。
「カズヤは、賢くて優しくて…俺たちの自慢の息子だよ…」
泣きそうになってる頬をそっと手のひらで包むと、その手をカズヤの手が包んだ。
「…俺がおとなになっても…にーのの子供でいてもいい…?」
「あったりまえだろ?それは一生変わらないんだから。おまえが嫌だって言っても、変わんないんだから」