第10章 Coke scene3
相葉さんがテーブルに載せてる手をぎゅっと握ってくれた。
「あいつが一人でハーバード行っても…ちゃんと踏ん張っていけるようになるにはさ…土台をちゃんとしてったほうがいいと思うんだ…」
「それが過去と向き合うこと…?」
「ん…人って過去を土台にして生きてるんじゃないかと思うから…」
「まあね…」
もちろんそれはカズヤ次第だけど…
本当に嫌なら無理に向き合うことはない。
だけどママさんのことは別なんじゃないかな…
「過去がなけりゃ、今の自分はないんだからな…」
相葉さんがきゅっと唇を引き結んだ。
涙、出そうなんだ。
「だから、俺としては会ってほしんだけどね…」
「ま、カズヤに聞いてみればいいさ…で?ホントの親の方はなんだって?」
「ああ…」
カズヤには弟がいる。
…母親は、カズヤの性癖がわかってから、徹底的に弟には触れさせないようにしていたようで、カズヤもほとんど弟との思い出はないようだった。
「遺産を全部弟に残したいから、その手続を今からしてるみたいだよ」
「へえ…」
「まずは戸籍をカズヤだけ分離したいってさ。ったく…のぞむとこだっつーの」
「ぶっ…まあでも、そんなことできんの?遺産独り占めって…」