第10章 Coke scene3
「ふふ…そっくりだねぇ…」
「だなぁ…」
翔さんが運転する車で家に帰った。
新宿を抜けると、道が混んでてなかなか前に進まなかったから、翔さんとずっと話をしてた。
「俺達も意地っ張りだけど、ママさんには敵わないな」
「だよねえ…ホントは会いたいくせにさ…」
「やっぱり…自分がマイノリティであるってことが引っかかってるんだろうな」
俺達には…ママさんの苦しみはわからない。
男に生まれたのに、女の心を持って。
差別もされたんだろうと思う。
罵られたことだってあるんだろうと思う。
自分ではどうしようもない根源を責められたこともあるんだろうと思う。
「いっぱい傷ついて生きてたから…ああなったのかな…」
「カズヤも…そうなんだろうな…」
俺たちには思いも及ばない苦しみを…
あの二人は背負って生きてきたんだろうな…
身を寄せ合って…疑似親子にまでなって…
「カズヤ…会うっていうかな…」
「大丈夫だと思うよ」
「…自信満々だね」
「だって…ママさんが会わないって言ってるからカズヤは会わなかったんじゃねえかな…」
「あ…」
カズヤは人の心に敏感で…
拒絶されることが怖いから、先回りしていつも自分で道を塞ぐ傾向がある。