第10章 Coke scene3
「いえ、私は…」
「カズヤは…」
翔さんがママさんの目をまっすぐ見た。
「ママさんが居なかったら、きっと生きていられなかったと思います」
「そんな…私はカズヤになんにもできなかったのに…」
「いいえ…そうじゃない。ただ傍に…傍にいること、あなたが生きていること…それだけでカズヤは救われていたと思いますよ」
「…だって、ママさん、カズヤのママでしょ?」
「ニノ…」
「子供にとって親ってさ…空気みたいにそこにあって当然だって思うものだと思う…けど、カズヤの親は敵だった。ママさんに出会って、初めてカズヤは親ってものがどういうものかわかったんじゃないかな…」
ママさんは暫く黙っていたが、突然大粒の涙を零した。
「意地っ張りなとこもそっくり…」
翔さんが笑ってママさんの隣りに座って背中を擦った。
俺はティッシュの箱を探してきて、ママさんの前に置いた。
「で…でも…水商売なんかやってる私がカズヤの傍にいちゃいけないと思います…」
ズビズビまだ言う。
「ママさん…カズヤ、22歳になったんですよ?」
「えっ…」
ママさんのなかでまだカズヤは十代で止まってるんだ。
「会いたくないですか?」