第10章 Coke scene3
「…お店、広げたんですね」
「ええ…隣の店をぶち抜いてね…今じゃショーもしてるんですよ」
ふふっと嬉しそうにママさんは笑った。
そういえば、前にそんなこと言ってたな…
ちゃんと実現したんだ。
店の中は薄暗いけど、前に比べたらだいぶ店の雰囲気は変わって、スッキリとした印象だ。
店の奥にはステージがあって、客席も以前の倍ほどありそうだった。
前は狭くてごちゃごちゃした感じだったのに。
「カズヤは、ママさんに似たんですよ…」
翔さんが微笑んだ。
「え?」
「こう、と決めたら石にかじりついてでもやり通す…そっくりですよ。カズヤとママさんは…」
「あら…」
照れて微笑んだママさんは、メイクしてるときよりも何倍も綺麗に見えた。
すっぴんのほうが美人なんじゃね?
「そろそろ…カズヤと会いませんか?」
「えっ!?」
「内藤は今、日本にはいません。カズヤが新宿にくることに障害はもうない。だから…」
「いいえ…それは…」
ママさんの目に薄っすらと涙が見えた。
「私と会うと、あの子は辛いことを思い出すでしょうから…」
「でも…」
「いいえ…あの子の人生の中で、私の役目はもう終わったんだと思います。こんな所に戻ってきちゃ…駄目なんだと思うわ…」