第10章 Coke scene3
まだメイクなんかはしてなくて、すっぴんで。
ヒゲの剃り痕が青々としてる。
セットしてない長い茶色の髪は、無造作に後ろで束ねられてる。
ごついからだはピンクのガウンで包まれていた。
「ごめんなさいね。こんな格好で…」
頬を染めながら言うけど、着替える気は一切ないようだ…
寝起きみたいだし…この様子だと店に泊まったのかな。
ウーロン茶のグラスが2つ、俺達の前のテーブルに置かれた。
「カズヤは…元気ですか?」
「ええ。今、東大に通ってます」
「えっ…!?と、東大!?東大って…あの東大!?」
「ええ。そうですよ」
「とうきょうのうぎょうだいがくとか、とうきょうこうかだいがくとかじゃなくて!?」
「え、ええ…東大です。東京大学…」
ママさんは頭を抱え込んだ。
「だ…誰に似たのかしら…」
「ぶぶっ…」
「きっと櫻井さんに似たのね…」
「いや…俺の母校の何倍も東大は…」
「いえっ…だってニノもまーくんも勉強嫌いじゃない!だから、きっと櫻井さんよ!」
近所のおばちゃんみたいな勢いでママさんはまくし立てる。
「よ…よくご存知で…」
「あら…ごめんなさぁい?」
だいぶ失礼な事を言ったと気づいたのか、ほほっとママさんは笑った。