第10章 Coke scene3
内藤が日本にいないということだけで、なんだか安心した。
本人がいくら反省しても、また薬に手を出すことになったとしたら…なにをされるかわからない。
「薬の害は一生続くといいます…あの子はやると決めたらやり通す子ではあると思いますが…こればかりは…」
長年弁護士なんていう職業をやってらしたせいで、いろいろなケースを近藤先生は見てきているという。
「家内があの子に付いて行っておりますので…どうかご安心を」
「え…じゃあ今先生はお一人なんですか?」
「ええ…これも子のやったことの責任だと思っております。私一人くらいならなんとでもなりますから…」
シワシワの手をこすり合わせて、近藤先生は微笑んだ。
「それに後数年したら、ここを畳んで私もアメリカに移住しようと思っています」
「えっ…」
「大丈夫。カズヤくんの後のことは信頼できる先生をご紹介します。それまでは私が全力で当たらせて頂きますから…」
ほほっと先生は小さく笑った。
「まあ、仁科の家のことは…幾分思い当たることもございますから…」
とっても上品に仰ってたけど、なんだかいたずらっ子みたいだった。
その後、カズヤの希望もあるから、話をきちんとしてからまた来ることを約束して事務所を出た。