第9章 ミント-before-
好きなのに…
こんなに好きなのに…
「俺のことが…?」
気がついたら、大野さんは涙を目に溜めたまま俺のことじっとみてた。
「な、なんでもないっ…」
慌てて立ち上がろうとしたけど、離してもらえなくて。
「離してっ…」
「言えよ…ニノ」
「いやっ…離してっ…」
身体をよじった瞬間、ソファに押し倒された。
「なにすんのよっ…」
大野さんは黙って俺のこと見下ろすだけで何も言わない。
「和也…」
びくりとするほど低い声だった。
「…え…?」
名前で呼ばれることなんて、なかった。
なんで今…
ゆっくりと大野さんの顔が近づいてきた。
目を逸らせなかった。
だって…凄く真剣な顔してて…
大野さんが目を閉じるところまで見えた。
次の瞬間、唇に柔らかくて温かい感触。
「…っ…」
嘘でしょ
なんでキスしてるの?
「大野さっ…」
藻掻こうとした腕を掴まれて座面に押し付けられる。
逸らそうとした顔は唇を離してもらえない。
なんで?
なんでこんなことするの?
大野さんの舌が俺の唇を舐める。
隙間を割入るように舌をねじ込んでくると、息苦しくなって思わず口をひらいた。
一層、大野さんが俺の中に入ってくる。