第9章 ミント-before-
「ほんと…?」
その声は、小さくて…震えてた
「本当だってば…嫌いじゃない…嫌ってなんかないから…」
「ほんとに…?」
大野さんの身体まで震えてきた。
「大野さん…?」
泣いてるの…?
「どうしたのよ…ねえ…」
「俺…おまえに嫌われてると思ってた…」
「はぁ?」
「ちゃんと…できなくて…」
「なにがよ…」
「ドラマ…主演、ちゃんとできなかった…」
「何言ってんのよ…なんで?なにが?魔王もおにいさんも、評価高かったじゃない」
「おまえのドラマのほうが…よくできてた」
「もうっ…何言ってんのよ!?」
「おまえのほうが…頑張ってた…だから、俺…」
そこで大野さんの腕の力が抜けた。
急いで身体を離して顔を見たら、やっぱり泣いてた。
「なんでよ…なんで泣くのよ…」
「ごめん…」
「あんた、本気でそんなこと思ってんの?」
「だって…視聴率も悪かったし…」
「ばかっ…ばかっ…大バカっ…」
「どうせ俺はバカだよ…」
「ほんと大バカだよ!俺はっ…俺は、あんたのことがっ…」
どれだけ焦がれてるか。
どれだけこの人の持ってる物に嫉妬したか。
人としても役者としても、何一つ敵わない。
それなのになんでこんなバカなんだっ…